KYOTO ART HOSTEL Kumagusuku

reading club vol.2 熊楠とアート 第五章「目と耳と薄い世界」

2018.10.21 / Cat :

Reading club vol.2 熊楠とアート 第五章「目と耳と薄い世界」

日時:2018年10月21日(日) 18:00~20:00
ゲスト:唐澤太輔(南方熊楠研究者/ 龍谷大学世界仏教文化研究センター博士研究員)、藤本由紀夫(アーティスト)
会場:KYOTO ART HOSTEL kumagusuku
定員:25名
参加費:1,500円(1ドリンク付)
ご予約:mail@kumagusuku.info
主催:KYOTO ART HOSTEL kumagusuku

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南方熊楠研究者の唐澤太輔氏とアーティストの藤本由紀夫氏のガイドによって、二人の往復書簡のように展開されてきた「reading club vol.2」シリーズ。唐澤氏は「熊楠」について、藤本氏は「アート」について、お二人のお話が一方を探りながらもう片方をも同時に照射していくことで、その重なりにおぼろげな像が見えてきました。スリリングな交換を経て、今回は特別編としてご両者にご登壇いただきます!

「第一章 南方マンダラ」(唐澤)では、熊楠の土宜法龍宛書簡(1903)に描かれた「南方マンダラ」と呼ばれる図から、彼の世界観に触れていきました。唐澤氏によるこの難解な図の読み解きによると、現象の錯綜する中心点「萃点」と上部に引かれた「理不思議」の領域は、まるで通路が通じているかのごとく一本の線で繋がっていることがわかります。熊楠は、この通路(パサージュ)を通じて現実世界とロゴスを超えた領域を往来する特異な人物であったようです。
「第二章 不安と希望」(藤本)では、熊楠がその「南方マンダラ」を構想していた19世紀末・20世紀初頭、世紀の変わり目のアーティスト達の言葉を、藤本氏の導きによって追いかけました。それは現代へと繋がる科学技術や思想のターニングポイントとなった時代でもあります。変革しゆく時代に応答し、アーティスト達もまた、希望と不安に揺れながら新たな表現を見つけ出していったのです。

「第三章 『やりあて』とtact」(唐澤)は、熊楠の造語「やりあて」をめぐって展開されました。偶然の域を超えた発見や的中のことを指す言葉ですが、熊楠は「理不思議」に通じることでそれを達成していたのです。また、熊楠はそのために必要な資質を「tact」(臨機応変な結合力)と呼んでいます。唐澤氏は、芸術行為も「tact」による「やりあて」ではないかとのヒントを与えてくれました。

「第四章 デュシャンの『極薄』と足穂の『薄板界』と熊楠の『事不思議』」(藤本)では、藤本氏がこれまでも考察を続けてきたマルセル・デュシャンの「極薄(アンフラマンス)」と稲垣足穂の「薄板界」を手掛かりに、熊楠の世界観に迫りました。通常の認知では捉えることのできない薄い世界の存在について、現代物理学の高次元理論までも交えながら、思考を巡らせていきます。デュシャンや足穂の創造行為、熊楠の「やりあて」は、まさにこの薄い世界との関わりに重要なポイントがありそうです。

シリーズのこれまでを振り返ってみると、一貫して、知覚を超えた知覚(超視覚、超聴覚的なもの)が鍵となっていることがわかります。まさに夢がそうしたものですが、感覚器官で通常とは異なる方法でおこなわれる感受作用については、今なお謎に包まれています。「夢」、「アンフラマンス」、「薄板界」、「理不思議」、「四次元」……稀代のアーティスト・研究者達はこぞってこの謎に挑んできたのでしょう。また、この知覚は一般には「第六感」、「並行世界」、「オカルティズム」といった事象でとらえられ、何度も繰り返し世の言説に流布してきました。今回は、「目」と「耳」をキーワードとして、この薄い世界の奥行きに迫っていきたいと思います。

(ゲストプロフィール)
唐澤太輔(からさわ たいすけ)
1978年、兵庫県神戸市生まれ。2002年3月、慶応義塾大学文学部卒業。2012年7月、早稲田大学大学院社会科学研究科・博士後期課程修了(博士〔学術〕)。日本学術振興会特別研究員(DC-2〔哲学・倫理学〕)、早稲田大学社会科学総合学術院・助手、助教を経て、現在、龍谷大学世界仏教文化研究センター(国際研究部門)博士研究員。専門は、哲学・倫理学、南方熊楠研究。

藤本 由紀夫(ふじもと ゆきお)
1950年名古屋生まれ。大阪芸術大学音楽学科卒。70年代よりエレクトロニクスを利用したパフォーマンス、インスタレーションを行う。80年代半ばよりサウンド・オブジェの制作を行う。音を形で表現した作品を個展やグループ展にて発表。その作品をつかったパフォーマンスを行うなど、空間を利用した独自のテクノロジーアートの世界を展開している。

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「reading club」は、一冊の書物を読むように時間をかけて、物事を深く学ぶトークシリーズです。vol.2では南方熊楠研究者の唐澤太輔氏とアーティストの藤本由紀夫氏のトークを交互に開催し、「熊楠」と「アート」という二つの大きな書物を平行読書していきます。シリーズを通して、この二者がどのように交わり、そこから何が導き出されるかを探ります。

* reading club vol.1は2015年〜2016年にクマグスクで開催された展覧会「THE BOX OF MEMORY – Yukio Fujimoto」関連トークシリーズとして実施されました。 vol.1ファシリテーター:岡本源太、スピーカー: 唐澤太輔、細馬宏通、林寿美、篠原資明、平芳幸浩、藤本由紀夫(敬称略・開催順)